山口県萩市の萩焼窯元泉流山についてご紹介します!泉流山は1826年に創業した萩を代表する名窯です。美術館にその名を残す吉賀大眉も当主として経営に当たっていた窯元でもあるのです。
萩焼とは
毛利氏が萩を拠点にした後、
- 朝鮮半島の陶工
- 李勺光
- 李敬の兄弟
によって窯が開かれたのが萩焼のはじまりとされています。
その後、萩には長州藩の御用窯が数多く作られ、茶人に好まれる陶磁器が多く作られることで有名な産地となりました。
しかし、長州藩の財政が悪化した影響で商業用陶磁器の奨励政策が行われ、萩の中でも小畑地区に複数の窯元が生まれたそうです。
萩焼の技術は、
1957年「文化財保護法に基づく記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」
に認定され、2002年1月には経済産業省指定伝統的工芸品に指定されています。
萩の七化け
萩焼の特徴を表した言葉に、
「萩の七化け」
があります。
焼き締まりにくい土を使用して登り窯でじっくり焼き上げている萩焼は、やわらかくて吸水性のある仕上がりになります。
そのため、使うにつれて陶磁器の色艶や表情が変わっていくのです。
手入れを怠らず使うことで、味わい深い萩焼の魅力を存分に楽しむことができます。
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窯元泉流山の歴史
泉流山は江戸時代後期の文政9年に開窯された歴史のある窯元です。
はじめの頃は磁器の生産などが中心だったようですが、次第に萩焼の生産へと転換したそうです。
泉流山が大切にしていることは、
「本当の萩焼らしさ」
だといいます。
熟練の職人による伝統的な技法で上質な作品を作り出す窯元なのです。
しかし、昭和中頃以降に当主を務めた吉賀大眉が、その流れに新たな風を吹き込みました。
伝統だけにとらわれず、萩焼の芸術性、美しさをさらに深く追求していったのです。
吉賀は様々な賞を受賞、文化功労者にも認定されました。
泉流山の敷地内に立てられた記念館にて、吉賀の作品などを鑑賞することができます。
現在でも、人力のろくろや登り窯を使用した技法で数多くの作品が製作されている窯元です。
熟練の技と登り窯
泉流山では工房での職人の製作風景を見学できます。
この工房では、職人は主に「蹴ろくろ」と呼ばれる自分の足の力で回すろくろを使って製作を行っています。
回す速度などを調整できるので、ひとつひとつの作品に職人の個性がのりうつるのです。
真剣に製作に取り組む職人の姿に目を奪われるでしょう。
そして、見どころのひとつとしてあげられるのが登り窯です。登り窯は傾斜地を利用した連房式と分類されるタイプです。
「間」もしくは「袋」とよばれる、小さなかまくらのような部屋が3~4つ程度つながっており、その中で焼き物を焼いていきます。
窯焚きは約48時間休まずに、交代しながら火を焚き続ける大変な作業です。
泉流山にはこの登り窯が2つあります。ひとつは、大正時代に作られた、萩の窯元の中でも最大規模のものです。
この窯は平成3年以降、使われていないそうですが、それまでは数々の名作が生まれています。
まず、大きさに圧倒されますし、窯を構成するレンガは長年の使用で風化したのか、ひとつひとつに趣を感じます。
もうひとつは、昭和60年に作られた現在も使われているものです。
こちらはひとつ目のものよりは少し小さなものですが、それでも稼動している窯なので、煤のつき方など、ひとつ目とは違った雰囲気があり、見ごたえがあります。
年に2~3回程度、窯焚きをやっているそうで、そのときは、公式ホームページでお知らせしているそうです。
タイミングを合わせて泉流山へ行くと、稼動している登り窯の姿を見学することができるかもしれません。
直営のギャラリーショップ
見学している間に、泉流山で作り出される陶器作品を購入したいと思った方、窯元直営のギャラリーショップが敷地内に併設されています。
全体的に古民家のような落ち着いた内装で、ゆったりした雰囲気の中、直接作品を選ぶことができます。
店内には正式なしつらえで作られた茶室もあります。
萩焼の大家 吉賀大眉(よしかたいび)の記念館で萩焼の歴史に触れる
敷地内には先代当主の吉賀大眉についての記念館が建てられています。「萩陶芸美術館・吉賀大眉記念館」です。
吉賀大眉は大正4年に泉流山の窯元家の長男として生まれました。
東京美術学校(現在の東京藝術大学)で彫塑を学び、陶芸家・加藤土師萌(かとうじはじめ)に師事しています。
萩に戻ってからは、工芸品、商業製品としての萩焼だけではなく、美術品としての萩焼を追求していきます。
日展では
- 北斗賞
- 特選
- 文部大臣賞
など、数々の賞を受賞しました。
晩年には代表作となる「暁雲シリーズ」を発表。日本芸術院会員や文化功労者にも認定されました。
記念館には吉賀の作品が陶磁器100点ほどと、吉賀の水彩画・彫塑も展示されています。
加えて、萩の古陶磁(弥生式須恵器・古萩茶碗等)や、吉賀ゆかりの作家の作品なども展示されており、萩焼をあらゆる側面から鑑賞できる記念館です。
入場料は、一般500円、高校大学生300円、小中学生200円とのこと。
工房を見学した前にでも後にでも、実際に製作された名器とよばれる作品を堪能してみませんか。
陶芸体験もできる
吉賀大眉記念館では陶芸体験を行うこともでき、3つのコースがあります。
手びねり体験
ひとつが手回しろくろを使った手びねり体験。
湯飲みやお皿などの様々な形の器を作ることのできるコースです。
電動ろくろ体験
もうひとつは、電動ろくろ体験。
熟練の職人の一対一の指導を受けることができます。
絵付け体験
最後のひとつは絵付け体験。
用意されている素焼きの湯飲みに好きな絵柄を描くことができます。
電動ろくろ体験に関しては中学生以上が対象ですが、他の2つは全年齢対象です。
電話、もしくは公式ホームページから事前予約ができます。
料金や所要時間などの詳細は公式ホームページでご確認ください。
春と秋の萩焼まつり
萩市民体育館では、春と秋に年二回、萩焼まつりが開催されます。
春はゴールデンウイークあたり、秋は10月初旬あたりが多いようです。
入場は無料で、多くの窯元や業者が出展しており、
- 特産品
- 飲食のブース
もあります。
周辺には世界遺産がある
山口、九州などにまたがって23の場所が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に認定
されており、萩市には5つの構成遺産があります。
泉流山のほど近くにもその遺産があり、あわせて観光することができます。
萩反射炉
ひとつは徒歩5分のところにある「萩反射炉」です。
萩藩が鉄製大砲を建造するための鉄を製造する装置として、1856年に反射炉が作られました。
高さ約10mの煙突が残っています。現在も姿を残している反射炉は、萩を含めて3ヵ所しかありません。
恵美須ヶ鼻造船所跡
ふたつ目は、徒歩15分のところにある「恵美須ヶ鼻造船所跡」です。
こちらも萩藩が1856年に開かれた造船所で、幕末に
- ロシアの技術を使った「丙辰丸」
- オランダの技術を使った「庚申丸」
という2隻の西洋式帆船が建造されました。
異なる国の技術をひとつの造船所で使用した例は他に見当たらないそうです。
また、江戸時代末期に作られた造船所では唯一、施設などのあとが確認できる貴重な場所だそうです。
萩市内にはこのほかにも
- 大板山たたら製鉄遺跡
- 松下村塾
- 萩城下町
の3つの世界遺産があります。
萩城下町では
- 萩城址
- 口羽家住宅
- 堀内鍵曲
- 菊屋家住宅
- 木戸孝允旧宅 ⇒木戸孝允旧宅は“維新の三傑”の旧宅!
などが見どころです。
萩焼窯元泉流山へのアクセス情報
- アクセス:最寄駅はJR山陰本線東萩駅で、そこから徒歩10分です。また、萩バスセンターからは、最寄りのバス停「吉賀大眉記念館前」までバス・車で10分弱です。
車では、小郡萩道路絵堂ICから国道490号経由で約25分です。「吉賀大眉記念館」でカーナビ検索ができるようです。- 駐車場:大型バス4台分・乗用車20台分の駐車場があります。
- 営業時間:8時30分~17時で、水曜日が定休です(水曜が祝日の場合は営業しています)。
萩市の観光・お出かけスポット
萩市の他の見どころをまとめました。
※価格は平成29年6月現在の情報です。
萩焼窯元泉流山の見どころ!伝統工芸の萩焼のすべてを堪能できる!【山口県萩市】のまとめ
萩焼の名器を鑑賞できたり、お家で気軽に使えるお皿を購入できたり、または自分で作ったり、歴史ある萩焼のすべてを堪能できる窯元が泉流山です。ぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか。