熊本県熊本市にある水前寺成趣園は熊本藩細川家ゆかりの大名庭園です。成趣園の面積は7万3千平方メートルに及び、この庭園は「水前寺公園」と通称されています。阿蘇山からの豊富な伏流水が湧き出て作られた池を中心にした回遊庭園です。専門家の分類では「桃山式」と呼ばれています。築山や浮石による造園、芝生や松等の植生が模しているのは東海道五十三次であると言われています。それでは、この水前寺成趣園の魅力を詳しくみていきましょう!
水前寺成趣園の今昔
肥後の国の細川藩の初代藩主は細川忠利でした。
忠利が鷹狩をしたときに豊かな清水の湧水のある場所を気に入って、茶屋「水前寺御茶屋」を築きました。
これが今日まで伝わる水前寺成趣園の由来と言われています。
3代肥後細川藩主の細川綱利の代に大規模な庭園造営が行われました。
この時に、桃山様式の回遊式の庭園のかたちが完成をみました。
これが現在みられる成趣園の原形となります。
中国唐代の詩人である陶淵明の詩、「帰去来辞」の一節「園日渉居以成趣」から拝借して「成趣園」と命名されました。
庭園の東側に馬場が江戸時代の中期に設けられました。
さて、江戸元禄は華美な時代であったので、成趣園には多くの東屋が立ち並び、十景が愛でられて享受されました。
第4代藩主の細川重賢の時代には宝暦の改革が行われ、園内の建築物は解体されて残されたのは酔月亭のみでした。
樹木は松のみになり質素な趣を湛えるようになりました。
肥後熊本藩第12代藩主の細川護久公の時代に版籍奉還が行われて庭園は一時期官有になりました。
1877年(明治10年)には西南戦争が勃発して茶屋、酔月亭が焼失して、泉水、築山等も崩壊して荒廃を極めました。
地元の有志が払い下げを嘆願した結果、1878年(明治11年)に熊本藩の歴代藩主細川家を祀る出水神社が創建されて、成趣園は神社の社地となり払い下げを受けました。
国の名勝、史跡として指定されたのは、時代は下って1929年(昭和4年)のことです。
「水前寺成趣園」と呼ばれるようになりました。
成趣園内を詳しくご紹介!
出水神社本殿
出水神社に祀られている肥後細川藩初代藩侯の細川幽斎は、後陽成天皇の弟君、桂宮智仁親王に古今和歌を教授しました。
学問に優れ、産業の育成にも尽力しました。
この出水神社には歴代の藩主14代と細川ガラシャ夫人も祀られています。
古今伝授の間
池湖の西側には茅葺の家が建っていて「古今伝授の間」と呼ばれています。
京都の御所にあった伝統的な建築物です。
この建物で、細川幽斎が皇弟の桂宮智仁親王に古今集の奥義を伝授したと言われています。
大正元年に、京都から成趣園に移築されました。
古今伝授の間から見る風景が成趣園の最も美しい風景であるとされています。
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古今伝授の間からの庭園の景色
古今伝授の間は重要文化財に指定をされています。
この部屋からは桃山様式の日本庭園が見渡すことができます。
この景色は山水の調和を織りなす成趣園の粋でもあります。
庭園の中心をなす池には湧水が絶えることが無く、その水は清く澄んでいます。
県の内外から訪れる観光客は庭園の景色に驚き、池の中を優雅に泳ぐ真鯉や緋鯉に目を見張ります。
湧水池と富士山
湧水の池の面積は10,000平方メートルに及びます。
池の中には飛び石が散在し、松の影が水面に映えます。
第3代藩主の細川綱利は成趣園の風雅な景を愛でられて、成趣園十景を造営しました。
この景は山水の美を取り入れており、四季の移ろいにそれぞれの趣を醸し出します。
細川綱利公成趣園十景 1686年(貞享3年)
- 阿蘇白煙(烟)
- 竜(龍)田紅葉
- 瀬田山雲(雪)
- 国分晩鐘
- 前林梅花
- 飯田夕陽
- 厳泉清流
- 健宮杉嵐
- 水隈乱螢
- 松間新月
忘れてはならないのが「はやしのいきなり団子」!味も雰囲気も熊本らしさを満喫できる
水前寺公園こと水前寺成趣園のすぐ前では「はやしのいきなり団子」が売られています。
地元の肥後っ子に言わせると成趣園に来たからには「いきなり団子を食べないとね」。
そもそもそも、いきなり団子とは、熊本県の郷土菓子のことです。
サツマイモと小豆あん、練り餅、小麦粉を練って平たく伸ばした生地で包んで蒸した食べ物です。
お店の前の小さな椅子とテーブルに腰を下ろして食するのは風情があります。
アクセス
東京、大阪等からの大まかなアクセスを以下に示します。
- 東京から空路90分、JRで380分
- 大阪から空路60分、JRで220分
- 広島からJR140分、高速道200分
- 松山から自動車50分+フェリー150分+高速道110分
- 福岡からJR80分、高速バス100分、自動車100分
熊本市のメインストリートに面していて、市電の水前寺公園停留所、JRの水前寺駅が最寄りになります。
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ここ水前寺成趣園は、最盛期には年間で約180万人もの観光客が訪れていました。現在でも40万人が一年間で訪れています。以前は成趣園の周りは一面の畑であったので、借景として阿蘇山、飯田山、立田山、健軍神社を楽しむことができました。今日では、成趣園の周囲にはマンションが林立し、都市的な景観の趣に浸ることができます。