鹿児島県鹿児島市にある1865年(慶応元年)に創業した機械工場は、今日では尚古資料館(尚古集成館)と呼ばれて博物館になっています。江戸時代末期(幕末)に薩摩藩主の島津斉彬は、欧米列強諸国がアジアに進出してきたことに衝撃を受けて、自藩の軍備を強化しさらに産業を育成する、いわゆる「富国強兵」政策を採用しました。斉彬の進める戦略的イニシアティブの中心地となったのは、一群の工場です。鹿児島県鹿児島市に現存するこの建物は、国の重要文化財に指定されてます。建物の内部は島津家の歴史と文化を語り伝えていますので、その魅力ついて今回はご紹介していきたいと思います!
模型や映像による、ビジュアルで分かり易い薩摩藩近代化の歴史
島津藩の殖産興業は、
- 反射炉
- 琉球船
の忠実な模型(古写真、図面、発掘調査に基づく)によって具体的に展示されています。
展示コーナーは3つの主題で構成されています。
まず、島津藩の文化は海によって育まれたことを示し、次に薩摩藩の近代化へと展示の概要は展開します。
シアターでは短い映像作品が上映され、薩摩の近代化への道程をさらに理解し易く「見せます」。
尚古資料館の歴史を手短に顧みてみる
1923年(大正12年)に、島津家が尚古集成館を開館しました。この時は島津家の直接経営でした。
時代はくだって、戦後の1956年(昭和31年)、尚古資料館の経営の主体が島津興業に移りました。
その3年後に、尚古資料館の敷地が国によって史跡指定されました。「史跡・旧集成館」と呼ばれました。
翌年、文部省(当時)が尚古資料館を博物館相当施設に指定しました。
さらに2年後の1962年(昭和37年)、建築物が重要文化財の指定を受けました。「重要文化財・旧集成館機械工場」となります。
平成に移り、1990年(平成2年)に尚古資料館の別館が開館しました。
2005年(平成17年)、尚古資料館の本館が改装されてオープンしました(平成の大改修)。
その2年後にあたる2007年、経済産業省が尚古資料館を「近代化産業遺産」に認定しました。
2009年(平成21年)、旧集成館と旧集成館機械工場が世界遺産の暫定的なリストに掲載されました。
2013年(平成25年)には、旧集成館と旧集成館機械工場を含む一帯の地域である「明治日本の産業革命遺産・九州、山口と関連地域」が2年後(2015年)に世界遺産に推薦されることが決まりました。
2015年には、旧集成館と旧集成館機械工場を含む一帯の地域が「明治日本の産業革命遺産、製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」として世界文化遺産に登録をされました。
分かり易い展示で尚古資料館の事業を体感してみよう!
展示室は3つに分かれています。
海をモチーフにした展示―海洋国家の交流史
第1展示室は海をモチーフにしていて、海洋に開かれた薩摩藩、島津家の歴史と琉球との交流史も紹介します。
島津家の伝統に育まれた薩摩の精神世界
第2展示室は近世の薩摩藩・島津家の歴史を紹介します。
薩摩文化も紹介されていて、武術や茶道、学問に関する展示品をご覧いただくことができます。
幕末明治の動乱期ー薩摩藩の動向と近代化
第3展示室は激動の近代を主題にしました。
「近代化の胎動」の章では欧米列強のアジアへの進出に危機感を抱いた薩摩藩の近代化の模様を紹介しています。
薩摩藩・島津家は当時としては巨大な反射炉を構築しました。
これは鉄製の銃砲を製造するために不可欠な設備でした。
さらに集成館の事業として機械工場が稼働を始めます。
明治期のできごとで新生・鹿児島の着実なる近代化の歩みのシンボルとなりました。
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歴史トリビアー反射炉の構築と近代化事業
歴史トリビアを紹介しましょう。反射炉を日本で初めて構築したのは薩摩藩ではなくて佐賀藩でした。
佐賀藩は蘭書を独自に翻訳、解読して反射炉を建設したのですが、薩摩藩は佐賀藩の翻訳書を入手して試行錯誤の末に反射炉建設に成功したのでした。
失敗を繰り返した当時の合言葉は「西洋人も人なり、佐賀人も人なり。薩摩人も人なり」でした。
尚古資料館の隣にある庭園の跡「仙巌園」には、反射炉跡の石垣と若干の遺構が現存していて、国によって史跡に指定されています。
ビジュアルな短編映像
映像の展示もあります。
集成館機械工場は鹿児島県の近代化の初源です。機械工場から始まる近代化を描いた短編映像作品を随時上映する他に、講座や講演会も開催されます。
アクセス
車で
- 鹿児島中央駅より20分
- 空港から40分(姶良IC~国道10号線経由)
- 桜島フェリー桟橋から10分
バスで
- カゴシマシティビュー 「仙巌園前」で下車
- 民営バス(3社)「仙巌園前」で下車
主な観光地まで
- かごしま水族館 車で10分
- 桜島行きフェリー乗り場 車で10分
- 黎明館 車で10分
- 鹿児島中央駅 車で20分
- 鹿児島空港(高速利用) 車で40分
- 指宿温泉 車で90分
- 霧島温泉 車で90分
鹿児島市の観光・お出かけスポット
鹿児島市の他の見どころをまとめました。
尚古資料館(尚古集成館)は世界遺産!?日本の近代化、維新の工業力を学ぼう!【鹿児島県鹿児島市】のまとめ
尚古資料館を訪れると日本の近代化の底力が象徴されているように感じられます。現在は尚古資料館は島津興業によって運営されていますが、島津興業の最高顧問は「尚古資料館に象徴されるような近代化への意志と努力があったればこそ日本は欧米列強の植民としてうっ屈せずにきわめて短い期間に近代化を成し遂げた」(趣意)と語っています。尚古資料館に佇んで、明治の先人たちの逞しさに想いを馳せるのも一興かもしれませんね。ぜひ、鹿児島県にお越しの際には、尚古資料館に立ち寄っていただきたいと思います!