香川県高松市にある高松市歴史資料館が開館したのは1992年(平成4年)です。この歴史資料館は訪れた人が、高松市の歴史を学び、郷土に親しむための資料館です。常設展示では、各時代の特徴をなす資料を展示し、原始時代、古代から、近代、現代までを順に紹介していきます。学習室には、Q&Aコーナーやビデオコーナーが設けられていて、楽しみながら高松市の歴史が学べます。資料館の教育・普及活動として、年に5回は企画展を開き、講座には講演会、館内講座、館外講座が適宜開催されているのも魅力的です。
高松市歴史資料館の常設展示の紹介!―源平の盛衰を今日に伝える屋島の源平合戦
平安時代の末期、源氏方と平家方が合戦を繰り広げた古戦場は高松市の東部にある屋島です。
高松市歴史資料館は、開館以来、
- 源平の戦を描いた絵画
- 関連する書籍や文献
を収集してきており、コレクションの一部を常設展として公開しています。
画に描かれた源平合戦の魅力
源氏と平家の戦いは後世の人々の想像力を刺激して
- 『平家物語』
- 義経記などの『軍記物語』
を生み出しました。源平の合戦は文学だけなく、絵画にも描かれています。
室町時代には早くも源平合戦に関連する説話を主題として絵巻物が制作されています。桃山時代には、合戦図を描いた屏風絵が作られました。
江戸時代には、源平合戦は士農工商の階級を越えて幅広い人気を博した主題となりました。合戦屏風だけでなく、
- 源平のエピソードを主題とする錦絵や掛軸
などの作品が数多く制作されました。
源平合戦をめぐる作品には、
- 諸行無常のさまざまな悲哀
- 美的風流
- 辛苦や勇気
- 忠誠心
を称える道徳という多様な精神が表現されています。
高松市歴史資料館の常設展示の名品を観賞しよう!
牟礼高松図
本作の筆は土佐光祐(1675-1710年)によります。土佐光祐は江戸時代の中期に活躍した絵師で初めは
「光高」
と号しました。
土佐光祐の祖父は土佐光起であり、桃山時代から江戸時代に土佐派の失っていた宮廷絵師としての地位を復活させています。
光祐は官位についた時に「光高」から
「光祐」
に改名しましたが36歳の若さで没したので、ほとんど作品は残っていません。
「牟礼高松図」
は義経をめぐる伝説から着想を得ています。屋島合戦の直前に義経は牟礼の海岸から高松方を眺めているようです。
描線は土佐派の堅実な筆致であり、緻密な彩色が特徴をなします。
讃州屋嶋源平大合戦之図
歌川芳虎は生没年不明の絵師で、江戸末期の天保年間から明治20年代まで活躍しました。歌川国芳の門下生で、
- 「一猛斎」
- 「錦朝桜」
- 「猛斎」
などの号を持ちます。
国芳門下であることから武者絵を得意としましたが、国芳には破門を言い渡されました。武者絵の他には、
- 美人画
- 横浜絵
- 開化絵
などを描きました。
この讃州屋嶋源平大合戦之図は基本的には屋島の源平の合戦を表した絵図ですが、芳虎は平知盛が絵が描かれているなど壇ノ浦の合戦との混同が見られます。
絵図の中ほどには、
- 那須与一(大扇の的と共に)
- 義経と忠臣の佐藤継信
- 能登守平教経(義経を弓で狙う)
が描かれています。
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那須与一扇の的図
本作の筆は、狩野休圓(1641-1717年)によります。江戸時代の中期に活躍した絵師でした。
名を「清信」といい、
「休圓」
と号しました。江戸期の同時代資料によれば、10代で徳川家光に見い出され、15歳の時には狩野派の絵師の一人として朝鮮に贈呈される屏風絵の制作に携わりました。
『平家物語』第11巻「那須与一」の記述によれば、
日暮れ時すなわち一日が終わるときに平氏は小船を一艘沖より漕ぎ出してきた。美しい女人が扇を立ててこれを射よと招き立てました。義経は那須与一に射落とすことを命じ、与一は見事に射落としました。
この那須与一扇の的図の絵図では、与一が扇を射抜いて、扇が天へ舞い上がった様子が描かれています。
那須与一図
本作を描いたのは江戸後期の絵師である浮田一恵(1795~1859年)です。名を「可為」と言い、豊臣氏を称して、号としては
- 「一恵斎」
- 「昔男精舎」
などを名乗りました。
沈滞していた大和絵の復興に尽力した復古大和絵派の祖であった田中訥言に師事していましたが、安政の大獄で捕縛され、出獄した直後に没しました。
この那須与一図の絵図では、『平家物語』第11巻「那須与一」の名場面
「扇の的」
が描かれています。
描かれた源平合戦
本館を訪れるのは、常設展の目玉である「描かれた源平合戦」を目当てで訪れるコアな歴史ファンが中心ですが、高松市の観光地巡りの一環として訪れる観光客もあとを絶ちません。
高松市歴史資料館のアクセス情報
高松駅から徒歩圏内。
JR高松駅から高徳線で3分、昭和町駅下車、徒歩3分。
ことでんバス昭和町・市図書館前バス停下車すぐ。
徒歩で高松駅から資料館まで約25分
高松市の観光・お出かけスポット
高松市の他の見どころをまとめました。
高松市歴史資料館の見どころをご紹介!市民が郷土に親しめる施設です!【香川県高松市】のまとめ
住所は高松市昭和町1丁目2番20号で複合施設サンクリスタル高松4階にこの歴史資料館はあります。高松市の歴史を学び、郷土に親しむための資料館です。常設展示では、各時代の特徴をなす展示物を出品し、原始時代、古代から、近代、現代までを順に紹介しています。