岩手県盛岡市にある盛岡啄木・賢治青春館は、盛岡が生んだ偉大な文学者・石川啄木と宮沢賢治の足跡を辿れるミュージアムです。この2人はモダンな街へと生まれ変わりつつあった盛岡で青春を過ごし、優れた作品を生み出しました。こんなミュージアムをご紹介します。
石川啄木と宮沢賢治とは?
今日は悲劇的なほど、若者、あるいは中年層も含めて文学離れ・活字離れが進んでしまい、近代日本が生んだ偉大な文学者であるこの2人の作品も遠くなってしまったように感じ、少々淋しい限りです。
こんな時代に抗して、近代の古典である石川啄木と宮沢賢治の作品を読む方々が増えてほしいと思います。この2人はいずれも夭逝しましたが、作品数は数多く残っています。
2人の共通点はそれだけではなく、生前にはあまり認められなかったという点も同じです。そして没後、間もなく大変に評価されて、古典の地位を獲得したという点も共通しています。
もちろん、旧制盛岡中学(現盛岡一高)で学んだという点も同じです。世代的には宮沢賢治のほうが10歳ほど年下ですが、近い時代を生きたといえます。
石川啄木ははじめ、与謝野鉄幹・晶子夫妻に認められて明星派の詩人として出発し、詩集【あこがれ】を出し、話題となり評価を得ました。
彼は北海道への放浪や結婚を経て、東京へ移り、東京朝日新聞社で校正の仕事を得て、歌集【一握の砂】を出しました。
しかし思ったほどの評価は得られず、結核で亡くなった後、第2歌集【悲しき玩具】が出ました。また晩年には詩集【呼子と口笛】を発表しています。
今日、石川啄木が評価されているのはここで挙げた2つの歌集と最後の詩集によってです。そこには真に歌うべきことのみを歌い、余計な装飾はそぎ落とした石川一(本名:いしかわ はじめ)の生命が息づいているといえます。
かつてならば、一握の砂巻頭のあの有名な歌【東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹と戯むる】などは誰もが知っていましたが、今はそうでもありません。
是非、石川啄木の作品を読んで、このミュージアムを訪れてみてくださいね。
宮沢賢治は詩集【春と修羅】から出発しましたが、当時はこの優れた詩集もあまり評価が得られませんでした。
そのためあまり部数が出なかったこともあり、評価がグンと上がった今、この詩集はいわゆる稀覯本として知られ古書価は非常に高いのです。
童話集も生前に発表されたのは【注文の多い料理店】のみで、これも生前は現在ほどの評価は得られませんでした。
彼の作品は詩と童話において同じような世界を表現しているように思います。これは【春と修羅】に収められている有名な詩【永訣の朝】と童話集【注文の多い料理店】を読み比べるとわかると思います。
一言でいえば抒情とファンタジーということです。
盛岡啄木・賢治青春館について
盛岡啄木・賢治青春館は、1910年に竣工した旧第九十銀行本店本館を利用して、この2人の生きた盛岡の街と彼らの作品について紹介しています。
常設展示室においては、2人の初版本や所縁の人々の古写真を多数展示しています。
舟越保武による啄木のブロンズ像、高田博厚による賢治のブロンズ像もあり、見どころ満載です。
光と音の体験室「スバル」は当時の盛岡の様子を銀河鉄道に乗ったような感じで体験できるスペースです。映像体験室もあり、そこでは現在、2人が生きた盛岡の街を紹介したDVDが見られます。
街並展示室「モリーオ」では当時、金融街だったこのミュージアムに因んで、金融の歴史や盛岡の歴史などに関して展示しています。
展示ホールでは現在、2人に関する企画展や盛岡所縁の美術展などが開かれています。
玄関広場「ポランの広場」は賢治の童話「ポラーノの広場」や戯曲「ポランの広場」に因んで、そこに登場する祝祭の広場になぞらえています。
ドッシリとした外壁と漆喰の壁は見るものを明治時代にタイムスリップさせてくれます。
スポンサーリンク
盛岡啄木・賢治青春館の基本情報
- 住所:岩手県盛岡市中ノ橋通1丁目1-25
- TEL:019-604-8900
- JR盛岡駅→岩手県交通「でんでんむし号」→乗車時間約12分→バス停・盛岡バスセンターななっく前→下車→徒歩約3分
盛岡啄木・賢治青春館周辺の観光スポット
○盛岡城跡公園
不来方(こずかた)城と呼ばれる南部氏の居城跡で石川啄木や宮沢賢治もよく訪れたといわれる場所です。
日本の都市公園100選の1つである盛岡城跡公園は、盛岡城主の居城跡を利用した公園で、園内には新渡戸稲造や石川啄木、宮沢賢治などゆかりの文人達の歌碑も置かれています。
また、春には「桜まつり」、冬は「盛岡雪あかり」などさまざまなイベントが開かれています。
盛岡啄木・賢治青春館で彼らの足跡を辿る【岩手県盛岡市】のまとめ
以上、盛岡啄木・賢治青春館をご紹介してきました!2人のファンならば是非訪れてみてください。今はファンでないかたも是非訪れてファンになって作品に触れてください!