岩手県盛岡市にある盛岡市先人記念館は、盛岡にゆかりのある明治期以降の偉大な先人約130人を顕彰し、紹介しているミュージアムです。盛岡にとどまらず、日本の精神文化の基礎を築いた方々が数多くいます。今回はこちらのミュージアムをご紹介します。
盛岡市先人記念館の魅力とは?
盛岡市先人記念館は、1987年10月2日に開館しました。
郷土の豊かな精神文化の礎を築いた優れた先人約130人を偲び、偉大な人間形成の過程を学ぶことができる施設です。
盛岡出身の歴史に名を遺した偉人にはどんな人がいるの?
米内光政(よないみつまさ)
旧盛岡藩士米内受政(よないながまさ) の長男として盛岡に生まれました。
盛岡中学を経て海軍兵学校へ進み、卒業後海軍少尉に任官、日露戦争では海軍中尉として従軍しました。
後に、ロシアやポーランドなどヨーロッパに駐在し、その地の実情を直に見聞しました。
1937(昭和12)年には林内閣のもと海軍大臣に就任し、陸軍の主張する三国同盟に反対し、この反戦主義の姿勢は終戦まで変わりませんでした。
米内光政とともに三国同盟に強硬に反対した人物に、かの有名な山本五十六もいました。
天皇の信頼も厚く、1940(昭和15)年には岩手県出身者としては3人目となる内閣総理大臣に就任しましたが、陸軍の反対に遭い半年後に辞任することとなりました。
太平洋戦争末期には小磯内閣のもとで4期目の海軍大臣として入閣、終戦のために尽力します。
終戦後も海軍大臣に留任し、海軍省廃省の責任者として日本海軍の最期を見届けた、旧帝国海軍の盛衰を見守ってきた人物です。
新渡戸稲造
盛岡藩士新渡戸十次郎の三男として盛岡に生まれました。
札幌農学校在学中にキリスト教の洗礼を受け、卒業後にアメリカ、ドイツへ留学し、農学や経済学などを学びました。
帰国後、札幌農学校教授となりますが、体調を崩し米カリフォルニア州で療養、その間に妻や恩師に問われていた日本の伝統的な道徳教育についての考えを『 BUSHIDO(ぶしどう) THE SOUL OF JAPAN』としてまとめて出版しました。
この本は日本文化の紹介書として各国語に翻訳され、今も版を重ねています。
のちに京都帝国大学や東京帝国大学で教鞭を取り、第一高等学校校長、東京女子大学学長などを歴任、その人格教育は多くの生徒に影響を与え、また当時遅れていた女子教育にも取り組みました。
国際連盟の設立時にはその深い学識と高潔な人格のため事務次長に推され、スイスに渡り連盟の発展に寄与します。
1984(昭和59)年11月には旧5千円札の肖像となりました(現在の5千円札の肖像は樋口一葉)。
金田一京助
金田一久米之助の長男として盛岡に生まれました。
盛岡中学時代には花明と号して短歌を詠み、与謝野鉄幹主催の『明星』の同人となりました。
石川啄木とは盛岡高等小学校(現下橋中学校)以来の友人であり、啄木の死まで親交が続いたそうです。
東京帝国大学時代、師の上田万年(かずとし)に『アイヌは日本にしか住んでいないのだから、アイヌ語研究は世界に対する日本の学者の責任なのだ。それをやる人がいないということは…』と言われ、アイヌ 語に興味を持ち、のちに北海道へ行き現地を調査、アイヌ民族に伝わる叙事詩ユーカラの存在に注目しました。
卒業後もアイヌの人々と交流しながら研究を続け、國學院大学教授、東京帝国大学教授を歴任、埋もれていたアイヌ叙事詩の存在を明らかにしました。
戦後には国語審議会委員として現代かなづかい制定に貢献、1954(昭和29)年には岩手県出身者としては2人目となる文化勲章を受章しました。
また多くの辞書や教科書の編・監修者としても知られています。
このように多士済々な盛岡にゆかりのある人物を紹介しているのがこの記念館なのです。
スポンサーリンク
盛岡市先人記念館周辺のスポット情報
○岩手県立美術館
2001年10月にオープンした美術館で、萬鐵五郎や松本竣介、舟越保武を柱とした郷土の美術家たちの作品を中心に収集・展示、ボランティアによる作品解説も実施しています。
また、国内外の様々なテーマによる企画展も開催されており、他にも、スズランテープを使った織物作りや粘土遊びなど、親子で楽しむワークショップや、展示作家や作品にちなんだ演奏を行なうミュージアムコンサート(鑑賞無料)なども行っています。
毎月1回、名作映画をはじめ、作品やアーティストに迫る貴重なドキュメント映像などを上映するアート・シネマ上映会(鑑賞無料、1日2回上映)は大人気です。
○盛岡市子ども科学館
ここは子どもも大人も楽しみながら科学の世界を学べるミュージアムです。
展示室・実験・工作・プラネタリウムなどがあり、見たり触れたりして遊びの中から科学に興味を持ち、探究心を養える施設です。
テーマ別の展示室や、星座の生解説などのプラネタリウムは大人気です!
科学工作教室や、サイエンスショー、ワークショップなども開催されています。
盛岡市先人記念館の基本情報
- 住所:〒020-0866 盛岡市本宮字蛇屋敷2-2
- TEL:019-659-3338
- アクセス:JR盛岡駅西口(マリオス前)→徒歩約15分
バス:岩手県交通 バス停「森南ループ200」あるいは「県立美術館前」→徒歩約5分
タクシー:JR盛岡駅→乗車時間約10分
車:東北自動車道盛岡IC→乗車時間約15分
盛岡市先人記念館は盛岡が生んだ偉人を紹介するミュージアム!新渡戸稲造に米内光政など錚々たる顔ぶれ!【岩手県盛岡市】のまとめ
以上、盛岡市先人記念館についていろいろご紹介してきました。盛岡は古い街で、旧制効率岩手中学校(現盛岡第一高等学校)や旧制盛岡市立高等女学校(現盛岡第二高等学校)などからは多くの人材が輩出し、各界で活躍してきました。そのなかには石川啄木や宮沢賢治といった文学者もいます。そういった先人について想いを馳せるにはこの記念館は格好のミュージアムといえるでしょう!ぜひ多くの方々に訪れていただきたいと思います。