福島県会津若松市にある白露庭は、江戸時代の会津藩の二千二百石の家老内藤介右衛門の屋敷内にある庭園です。遠州流の様式の格式高い名園で、若松城址の鶴ヶ城公園のすぐそばにあります。ヒマラヤスギ、トウカエデ、ゴヨウマツ、キャラボク、ツツジ等の多様な植木を楽しむことが出来ます!
■内藤介右衛門信節と白露庭
この内藤庭跡の現役時の所有者は、内藤介右衛門信節でした。
内藤家は、武田信玄の配下の内藤昌豊の血を引く会津藩内の名門で、幕末時、信節は信順の嫡子にして若松藩の家老職にありました。
慶応4年(1868年)に、会津若松城に新政府軍が迫ると、信節は籠城して三の丸の守備に当たりました。
しかし、戦況は思わしくなく、一か月弱籠城したのち軍議が行われて、旧幕府軍は新政府軍に降伏の使者を遣わしました。
その前後に、信順をはじめとする内藤一族九名は上田家一族とともに、若年寄上田八郎右衛門の菩提寺であった泰雲寺にて、自害しました。
信節じたいは、戊辰戦争の後も生きながらえ、猪苗代や東京で謹慎し、その後漢学の教授をして余生を過ごし、享年六十歳でこの世を去っています。
その戊辰戦争の際に、若松城下にあった多くの武家屋敷は焼失し、内藤邸も白露庭が残るだけとなりました。
現在は、裁判所の庭として、街の景観を美しくしています。
スポンサーリンク
■小堀遠州
この庭園の形式は、遠州流とされています。
遠州流庭園とは、江戸時代前期の作庭家小堀遠州の流れを汲むもののことで、正方形の切り石を配置したり、四角く切られた長い畳石を敷いたり、直線を導入した造作が大きな特徴です。
樹木を大胆に刈り取ったり、花壇を多く使用したり、あるいは芝生を導入するなど、西洋庭園の影響も強く受けていました。
小堀遠州の造った庭の代表例としては、京都市東山区の高台寺庭園、京都市中京区の二条城二の丸御殿庭園「八陣の庭」などの池泉回遊式庭園や、京都市左京区の南禅寺方丈庭園、京都市東山区の圓徳院北庭などの枯山水庭園など、多岐にわたり数多くの遺構が残っております。
小堀遠州自体は、備中松山藩二代目当主で、作庭のほかに建築、書道、華道、茶道と多くの文化的活動をした大名です。
■植生
白露庭には、さまざまな木々が植えられております。
ヒマラヤスギは、マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹で、高さは四十~五十メートル、幹の直径も大きいものは三メートルにまで生長します。
トウカエデは、ムクロジ科の落葉高木で、葉は対生で薄くて光沢があり、三つに浅裂しています。花は、淡黄色の五弁で春に咲きます。
ゴヨウマツは、マツ科マツ属の常緑針葉樹で、高さは六~八メートルです。針葉は青みを帯びた緑色をしており、五~六センチメートルの葉が五枚束生します。
キャラボクは、新潟から鳥取までを原産地とするイチイの変種の針葉樹で、高さ二十メートルほどになります。針葉は濃緑色で、螺旋状に四方八方に伸びます。四月ごろに小型の花をつけて、初秋に赤い実を付けます。
ツツジは、ツツジ科ツツジ属の低木の植物で、葉は常緑か落葉性で互生です。春先に漏斗状の白や赤などのカラフルな花が咲きます。
このような緑豊かな植物が植えられており、自然を楽しむには持って来いのスポットです。
■周辺スポット
白露庭の道を挟んだ向かいには、筆頭家老西郷頼母の屋敷跡があります。
この武家屋敷も、戊辰戦争の戦火で失われましたが、跡地には石碑が建っています。
戊辰戦争の際、西郷頼母は新政府軍に恭順の姿勢を摂ることを勧めましたが、多くの会津藩士は徹底抗戦を主張したので、やむなく長子吉十郎を伴い城から脱出しました。
送り出した妻は、もはやこれまでと、一族を殺して自らも自害して、総勢二十一名ともに果てます。
その時の辞世が、
「なよ竹の風にまかする身ながらもたわまぬ節はありとこそきけ」
という句です。
その家老たちが住んでいた屋敷跡のすぐ前に広がるのが、鶴ヶ城公園です。
一般的には会津若松城の城址であり、その城は往時、難攻不落の名城として謳われていました。
三代将軍家光の庶弟保科正之が二十三万石で入封し、会津松平家の居城となっていました。
戊辰戦争では、会津戦争で旧幕府軍が新政府軍の攻撃を一か月の間持ちこたえましたが、軍議により降伏の使を遣わして開城しました。
一旦は明治政府の所有財産となった若松城でしたが、若松県庁の場所になったため、営所建築のため不必要なものはすべて解体すべしとの陸軍省からの達しが申し渡され、明治7年(1874年)に天守をはじめとする全ての城郭が解体されたのです。
その後、昭和40年に、多くの方々の寄付により鶴ヶ城が再建されました。
現在は、公園として整備されています。
■アクセス
電車で来る場合は、東北新幹線郡山駅で磐越西線に乗り換えると、60分で会津若松駅に到着するので下車し、会津バスの路線バス「ハイカラさん」または「あかべぇ」に10分乗り、「鶴ヶ城入り口」バス停を下車して、徒歩3分です。
車で来る場合は、磐越自動車道の会津若松インターチェンジで下車し、国道121号を南下して国道49号に突き当たったら左折、東へ向かい線路を越えてから国道118号を右折、しばらく南下すると左手に鶴ヶ城公園が見えてくるので、この近辺の駐車場に止めて、白露庭までお訪ね下さい。
また、会津バスの高速バスも出ています。仙台駅東口と新潟駅前から若松駅経由で鶴ヶ城・合同庁舎まで、直通バスが出ています。東京からだと、バスタ新宿から若松駅前までの直行便があります。
会津若松市の観光・お出かけスポット
会津若松市の他の見どころをまとめました。
屋敷跡白露庭の見どころ!幕末維新の犠牲者に想いを馳せられるスポット【福島県会津若松市】のまとめ
白露庭は、明治維新の犠牲となった多くの命を氷山の一角として、想い偲ぶことのできる武家屋敷跡です。白露庭を観ることは、会津の歴史を観ることです。現在の平和の大切さを実感するためにも、白露庭を眺めその歴史をよく知ることをお勧めします!白露庭を皮切りにして、会津や日本の歴史に興味を持って調べてみるのも、一興かもしれませんね!