青森県青森市にある棟方志功記念館は、青森が生んだ世界に誇る板画家、棟方志功の文化勲章受章を讃え、その芸業を末永く後世に伝えるため、1975年(昭和50年)に開館しました。平成24年7月には鎌倉市の棟方板画館と合併したことにより、板画のみならず倭画、油絵、書など幅広い棟方作品をほぼ網羅し、その収蔵作品数は国内最大のコレクションとなりました。今回は、そんな棟方志功記念館について紹介します!
棟方志功記念館について
棟方志功記念館の展示室は、作品の一点ずつをじっくり見てほしいという本人の意向により、広さがとても限られています。
さらに年間に4回もの展示替えを行っており、作品と併せて「板木」や「使用した道具」などの関連資料も展示されているので、その限られた広さの中に充実した展示内容が備わっていることが伺えます。
また校倉造りを模した建物は池泉回遊式の日本庭園と調和し、落ち着いた佇まいは季節の移ろいとともに四季折々の風情を感じさせてくれます。
そもそも、棟方志功とは?
大正13年に21歳で上京した棟方志功は版画家として成功し、「世界のムナカタ」と呼ばれました。
生涯かけて製作した「木版画」や「肉筆画」は生命力に溢れ、現代の我々の目にも斬新に映ります。
1938年に謡曲「善知鳥」に題材をとった《勝鬘譜善知鳥版画曼荼羅》で第2回新文展の特選を得ましたが、これは官展において版画が受賞を果たした初の快挙となりました。
翌年には代表作《二菩薩釈迦十大弟子》を発表、また、1942年より著書の中で自らの木版画を「板画」と呼び、他の創作版画との差別化を図るようになります。
戦後の棟方は、
- 1955年に第3回サンパウロ・ビエンナーレでメタルールジカ・マタラッツォ賞(版画部門最高賞)
- 1956年に第28回ヴェネツィア・ビエンナーレで国際版画大賞を受賞
するなど国際的な評価を確立し、1959年にはロックフェラー財団とジャパン・ソサエティの招きにより初めて渡米、各地で個展を開催し、大学で「板画」の講義をおこなっています。
1960年頃から眼病が悪化し、左眼が殆ど失明状態となるにも関わらずその旺盛な制作活動は衰えを見せず、
- 《花矢の柵》
- 《大世界の柵》
など「板壁画」とよばれる大型の作品を手がけています。
棟方の郷土を愛する心は人一倍強く、凧絵やねぶたは勿論のこと、風物に対しても大変心をよせていました。
また青森市の合浦公園には、少年達を励ますために「清く高く美事に希望の大世界を進み抜く」という言葉を刻んだ記念の石碑が建てられています。
青森市は1969年2月17日、棟方志功へ青森市名誉市民第1号の称号を贈りました。
同70年11月には、青森県人としてはじめて文化勲章を受章し、1975年9月13日東京都において72年の生涯を閉じました。
棟方は、版画のほかに、
- 油絵
- 倭画
- 書
- 詩歌
などに多くの傑作を残しています。
著書類も多く、
- 「棟方志功板画大柵」
- 「板極道」
- 「わだばゴッホになる」
など数十冊にのぼっています。
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棟方志功の展示スケジュール
多くの名作を世に輩出した棟方志功ですが、先に述べたように年間4回の展示替えにより、多くの作品を年間で楽しめるようになっています。
【春の展示】棟方志功の風景
【春の展示】棟方志功の風景の会期は3月14日(火)~6月18日(日)です。
棟方志功の代表作に「海道シリーズ」があります。
棟方がこのシリーズでとらえた風景は単にその景色を写すだけではなく、人々の暮らしに関わる風景を描いたものとなっていますが、春の展示では「追開棟方板画東海道妙黛屏風」を主に、棟方の目がとらえた風景を「板画」「倭画」「油絵」などで描いた作品を紹介するほか、晩年に多く制作した棟方の心象風景ともいうべき作品を紹介します。
【夏の展示】自由な色彩 闊達な描写ー倭画
【夏の展示】自由な色彩 闊達な描写ー倭画の会期は6月20日(火)~9月24日(日)です。
棟方志功は「絵画は塗るのではなく、描くことである」ということを信条としたところから、自身が描く肉筆画を敢えて「倭画」と呼んでいました。
倭画は板画のような表現とは違い、筆が自在に動くため描線一本一本が非常な速さで描かれています。
また、「(ネブタは)強烈きわまる染料で黄、赤、青、紫の、様々な極端な原色を駆使して作るのです。このネブタの色、これこそ絶対混じりけのない私の色彩でもあります」と語り、倭画では鮮やかな色彩を駆使した華やかな作品を多く制作しました。
夏の展示では自在な描写と華やかな色彩の倭画を主に紹介します。
【秋の展示】ここからはじまった志功-の原点・油絵
【秋の展示】ここからはじまった志功-の原点・油絵の会期は9月26日(火)~12月17日(日)です。
棟方志功は板画家として著名ですが、その出発点は油絵であり、最初の画集は昭和17年に出版された「棟方志功画集」という油絵画集でした。
絵画に興味を持ち画家になりたいという想いを抱き始めていた頃、棟方志功はゴッホの油絵と出会い、油絵画家を目指しました。
版画を始めるようになっても、油絵を描くことはやめませんでした。
秋の展示では棟方志功50年の画業の中での、初期から晩年までの油絵作品を紹介します。
【冬の展示】文字との交流
【冬の展示】文字との交流の会期は12月19日(火)~平成30年3月18日(日)です。
棟方志功はたくさんの書作品を遺しており、特に晩年の書には力強さを感じます。
棟方作品にはこのような書作品だけではなく、
- 絵画と文字が一体となった作品
- 文字そのものを絵画作品としたもの
など、文字と関わる作品が数多くあります。
冬の展示では書作品のほか、文字と一体となった板画、倭画などの作品を主に紹介します。
棟方志功記念館の基本情報
- 開館時間
4月~10月 午前9時00分~午後5時00分
11月- 3月 午前9時30分~午後5時00分- 休館日
月曜日(祝日及びねぶた祭り期間8/2~8/7は開館)
※ 平成29年度の年末休館は12月29日~31日の予定です。
なお、年始は1月1日から開館いたします。
臨時休館する場合もございます。- アクセス
車の場合、東北自動車道 青森中央インターから約15分
タクシーの場合、新青森駅から約20分。青森駅から約10分
駐車場
棟方志功記念館には駐車場がありません。
徒歩圏内に4件の駐車場がありますので、そちらを利用することになります。
どこも30分~45分、100円で利用可能です。
バスでの行き方
JR新青森駅から〜「東部営業所」「県立中央病院前」行へ乗車約25分、 「堤橋」下車 徒歩約10分
JR青森駅から〜「横内環状-青森駅」「中筒井経由昭和大仏」行へ乗車 約15分、「棟方志功記念館通り」下車 徒歩約4分
JR青森駅から〜「国道経由東部営業所」行へ乗車約12分、「堤橋」下車 徒歩約10分
無料シャトルバス
また、土日祝日とねぶた期間は無料のシャトルバスも運行されていますので、タイミングがあった際はこちらを利用するのもおすすめです。
棟方志功記念館 分館
愛染苑(富山県南砺市)
富山県南砺市にある「南砺市立 福光美術館」では、棟方志功と日本画家 石崎光瑤の作品が常設展示されています。
また分館として棟方志功記念館愛染苑があり、この地で7年間居住し、制作活動を行った棟方志功の暮らした姿がしのばれているのです。
棟方版画[板画]美術館(神奈川県鎌倉市)
棟方志功が晩年を過ごした鎌倉にも、かつて棟方版画美術館が存在しました。
現在は閉館してしまったため、こちらの収蔵作品は、青森の棟方志功記念館にあります。
青森市の観光・お出かけスポット
青森市の他の見どころをまとめました。
棟方志功記念館の油絵と版画を見る!バス&駐車場情報も!【青森県青森市】のまとめ
棟方志功記念館では、校倉造りを模した建物の中で青森が生んだ世界の板画家、棟方志功の作品に触れることができます。じっくりと作品を堪能し、日本を代表する芸術家の生涯にふれれば、きっと言葉にならない感動を味わえるかもしれません。ねぶた祭などで青森を訪れた際には、ぜひこちらもご覧になってみてください。